考える葦

日々の記録。

2016年のベストあれこれ

2016年に読んだ本ベスト3

1.「本という不思議」長田弘

 

本という不思議

本という不思議

 

 

誰にも教えたくないくらいに良い本と出会った。

詩人 長田弘の「本という不思議」

何のために、人は本を読むのか。ー「極上の時間」をみずから手にするために。

 という一文から始まり

本とは何か、本を読むこと、本と本を取り巻く全てのことに言及した本好きにはたまらない一冊。本とは何かの例えで出てきた素晴らしい回答を紹介。

本とは

心の貯蔵庫、

時の倉庫、

本という感受性の学校、

本は精神的家具、

 

全部正解。 

読んでいて、本というものがあってほんとうに良かったなーと心から思える瞬間がいくつもあって、時代がどれだけ変わっても本はなくならないし読まれ続けていくのだろうなと。普段考えることもない、「本を読む」ことについて考えさせられた。本を読むことは自由だ、どんな読み方をしてもいい、読まないで積んでおくのも、最初から読まなくたって読みたい箇所だけ読むのだっていい。読むことだけが読書じゃないんだって。自分の中の本を読むということのハードルが下がった革命的な一冊。

 

 

2.「しろいろの街の、その骨の体温の」村田沙耶香

 

 

今年は新しい作家の本をよく読んだ。そのうちのひとりが今年の芥川賞作家、村田沙耶香だ。

私は好きな作家の本ばかり読む癖があるので、なかなか新しい作家に手を出せない。やはり好きな作家は文章のリズムが好きだったり、面白いの価値観が一致していたりと、それなりに理由はある。特に小説は顕著にそれが表れてくるので、ほんとうに難しい。しかし、村田沙耶香の小説は違った。初めてでも読みやすい。描写力の上手さや比喩が絶妙で一気に好きな作家になった。

まずタイトルにやられた。「しろいろの街の、その骨の体温の」の、多くないか?意味がよくわからないけどなぜか気になる。思わずタイトル買いしちゃうやつ。

作品はスクールカーストがテーマになっていて、誰しもが通る思春期あるあるの連発。自分の場合、ここまで露骨なスクールカーストはなかったけど、あの頃は学校の中のことが全てで、世界の中心だったんだと。なんとなくその頃の記憶が蘇ってきたりして。スクールカーストといえば、川上未映子の「ヘヴン」も衝撃だったけど、こちらも衝撃さでいえば負けてないので読んでみては。


 

 

3.「背中の記憶」長島有里枝

  

背中の記憶 (講談社文庫)

背中の記憶 (講談社文庫)

 

  

写真家 長島有里枝のエッセイ。

神様は写真と文才の2つの才能を長島有里枝に与えたのだとしか思えない。

幼い頃の記憶って人はどれだけ覚えているものなんだろう。断片的には覚えているだろうけど、ほとんど覚えていない人が多いんじゃないか。しかし長島有里枝は些細なことでもとても丁寧に記憶していて驚いた。弟が生まれた日のこと、初恋のこと、夏休みに親戚の家に泊まりに行ったこと。自分の記憶じゃないのに読んでいて懐かしくなるのはなぜだろう。おそらく誰にもある幼い頃の記憶のひとつが長島有里枝の記憶と重なって見えるからなのかもしれない。

自分と家族のヌードを作品として発表したチャレンジングな人だから、さぞ変わった家庭環境で育った人なんだろうなーと勝手に想像していたのだけど、想像とは全く異なる、ごくありふれた家庭で育っていて、個人を形成する上で家庭環境というのはどれだけ影響するものなのか。というか、ありふれた家庭だからこそ繊細で力強い表現ができたのかも。ありふれたものこそ最強なんだ。ひとつひとつの記憶にシャッターを押したような記憶の切り取り方の上手さは写真家の長島有里枝だからこそ書けた文章だったのだと妙にしっくりきた。

 

 2016年に観た展覧会ベスト3

1.「蜘蛛の糸」

@豊田市美術館

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2.「杉戸洋 こっぱとあまつぶ」

豊田市美術館

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3.「舟越桂 私の中のスフィンクス

@三重県立美術館

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 今年の豊田市美術館は私的に当たり年で、企画展が2つとも面白かったなー。

三重県立美術館の舟越桂はずっと実物をこの目で観たいと思い続けてやっと観る機会ができたので感動した。舟越桂の彫刻は初めて画集で目にした時、怖かった。人でも動物でもない認識できない怖さと目の冷たさが印象的だった。実際に観た印象は画集だけでは感じられなかった怖さの中にある美しさを見た気がして、尊い気持ちになった。やっぱりじかに目にすることって大事だなと改めて実感。観たいものはちゃんと観るようにしょう。